リサーチプロジェクト実地調査の報告論文が刊行されました。
- RP広報
- 2021年4月13日
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先日刊行された紀要『政策科学』第28巻第2号に、2019年10月の実地調査(北海道下川町)の調査結果をまとめた論文が掲載されました。
本論文は「北海道下川町における循環型森林経営とバイオマス産業の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献と将来展望」をテーマとし、北海道下川町で行われてきた循環型森林経営とバイオマス産業の取り組みとその展開について、既往文献からの情報に2019年10月の現地調査で得られた知見を追加し改めてまとめた上で、それらの取り組みを環境・経済・社会の3つの側面から整理することでSDGsへの貢献を明らかにしたものです。

下川町では 1980 年以降に町有林管理面積を拡大して 基盤産業である林業・林産業の充実を図り、2000 年以 降には森林バイオマス産業、具体的には木質バイオマスボイラによる熱供給を計画・実行して、熱エネルギー自給率を 56% まで向上させました。エネルギー自給率が高い 地方自治体はほかにも存在しますが、下川町は、主に町有 林から持続的に得られる資源のカスケード利用により 林業・林産業・バイオマス産業のそれぞれの活動を町内でバランスよく行い、ゼロエミッションを行いつつ地域内経済循環の向上を図っているというように、町全体を挙げて地域内資源に基づく森林総合産業を構成しているのが特長です。
2019 年度には民間企業によって発電出力 1,000 kW を超える木質バイオマス熱電併給施設および水力発電所の運転が町内で開始され、これらをカウントすれば電力の自給率も向上してきていると言えます。しかし、この民間の木質バイオマス熱電併給施設では、用いられている 木質ペレット燃料の元になっているのは殆どが町外の資源であり、また、熱電併給は行えるが施設外への熱供給には至っていません。将来、町内の循環型森林経営での電力を含むエネルギー自給率 100% の達成を視野に入れるためには、林業・林産業の担い手を供給するとともに エネルギー需要の確保のための人口の維持が不可欠となります。そのためには、森林総合産業の収益性のさらなる向上が必要であり、町内の自助努力のみならず、循環型森林経営を持続することの環境上の価値を高く評価し支援する制度の強化も求められます。
日本の多くの農山村地域と共通の課題を抱えながら、地域の森林資源を有効に活用することで戦略的に対処してきた下川町の取組みは、さまざまな地域での地方創生とSDGs 推進を考える上で重要な事例であり、今後の動向にも注視していくことが望まれます。
本論文は、Web上に公開されていますので、ご興味のある方は立命館学術成果リポジトリで検索をお願いいたします。
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